儒灯

【温故知新】儒学の普及に力を注いでおります真儒協会 会長、高根秀人年の個人ブログです

水【坎】 に想う  (その9)

(こちらは、前のブログ記事の続きです。)

《 孫子 と 「水」 ・・・ 「兵形象水」 》 


孫武は、春秋時代の兵法家で兵法の創始者
「兵家〔へいか〕」の開祖として有名です。

その著書『孫子』十三編は、兵書の枠を超えて広く永く愛読・研究されています。

例えば、『三国志』で有名な曹操は、
孫子』を熟読研究の上注釈まで加えています。

わが国においても、八幡太郎義家が雁行〔がんこう〕の乱れから伏兵を悟った話、
武田信玄の“風林火山”の旗さしものが
孫子』・「軍争編」から採られたものであったりしたこと、
などよく知られています。

「兵形象水」には、理想的戦闘態勢が、水のように形を持たず、
変化に対して流動的・柔軟に変化するものであることが述べられています。

想いますに、『孫子』の兵法は、変化への対応ということで易とも重なります。

“水”をその思想的象とすることで黄老思想とも重なってまいります。


○「夫兵形象水、水之行〔形〕、避高而趨下、兵之形〔勝〕、避実而撃虚。 | 
水因地而制流〔行〕、兵因敵而制勝、故兵無常勢、(水)無常形。
能因敵変化而取勝者、謂之神。 | 
故五行無常勝、四時無常位、日有長短、月有死生。」

■ 夫〔そ〕れ兵の形は水に象〔かたど〕る、水之行〔こう/≒形〕は高〔こう〕を避けて
下〔か〕に趨〔はし/おもむ・き〕り、兵の形〔≒勝〕は実〔じつ〕を避けて虚を撃つ。 | 
水は地に因りて流れ〔≒行〕を制し、兵は敵に因りて勝を制す。
故に兵に常の勢無く、(水に)常の形無し。
能〔よ〕く敵に因りて変化して(敵の変化に因りて)勝を取る者、之を“神〔しん〕”と謂う。 | 
故に五行〔ごぎょ〕に常の勝なく、四時に常の位なく、日に長短有り、月に死生有り。

《 大意 》
そもそも軍隊の形(配備)は、水の(一定の形がない)形をお手本とします。
水の流れは(千変万化し)高いところを避けて低いところへと向かってゆき、
(同じように)軍隊の形は(千変万化し)敵の堅陣を避けて
スキのある手薄な箇所を攻撃する(ような形をとります。) 
水は地形(の高低)に従って流れの方向を定めますし、
軍隊は敵(の情勢)に応じて(その時の)勝利の方策を決めます。
ですから、軍隊には(敵に対して)決められた態勢というものがなく、
また(水に)定められた形はなく、(さまざまな地形によって変化し)
うまく敵情のままに従って変化して勝利を勝ち取ることができるのです。
そのようなものを(人知を超えた)“神〔しん〕”というのです。
そこで、木・火・土・金〔ごん〕・水の五行〔ごぎょう〕においても
(相生相剋〔そうしょうそうこく〕の関係で)一つだけでいつでも勝つというものはなく、
春・夏・秋・冬の四季にも一つだけでいつでも止まっているものはなく、
日の出ている時間にも長短があり、月にも満ち欠けがあるのです。

■参考  ◎ 【 易学 と 孫子 】

   ( *孫子孫武  *夫概〔ふがい〕= 呉の将軍、呉王・闔閭〔こうりょ〕の弟 )

夫概: 「ところで何をしていた?」
孫武: 「『周易』を読んでいたところです。この家にありましたので。」
夫概: 「『周易』!周の天子が書いた易学の書だな。
    まさか、それで占いでもするつもりか?」
孫武: 「ああ、いえ。退屈しのぎに目を通していただけです。」
夫概: 「易学の書にか!『周易』とは、てっきり占いの書かと思っていた。
    他に何か役に立つのか?」
孫武: 「はい。 『周易』の“易”という字は、そもそも、
    トカゲ〔蜥蜴〕の皮の色の変化を指します。

    “周”という字は、天地のあらゆるものを包み込むことを意味します。
    『周易』とは、伏〔ふくぎ〕・神農・黄帝・文王らの英知〔えいち/叡智〕の結晶です。
    その教えは、単に占いのみに止まりません。
    兵法にも大いに関係します。
    得るところが、実に多いのです。
    どうしたらもっと巧みに兵を動かせるかといったことから、
    勝機を得る策に至るまで学べます。
    ですから、何度読んでも飽きることはありません。」
夫概: 「改めて聞くと興味深い話だ。
    では、ひとつ、私の将来を占ってはもらえぬか ・・・ 」

 (DVD:「孫子兵法大全」・第19話/郢落城 より)


《 日本文化 の 「水」 》

山崎正和〔まさかず〕氏は、「水の東西」(『混沌からの表現』所収/PHP研究所) の中で、
水の東西文化比較論を述べています。

その中で、日本と西洋(欧米)の水について、
典型的具体例として日本の「鹿〔しし〕おどし」と西洋の「噴水」を挙げて、
次のような水の対比で東西の文化を捉えています・・・


※ この続きは、次の記事に掲載いたします。


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